夾纈復元の様子

工房紹介

工房は京都市北部、山間部の川沿い集落にあります。 
工房では板締めを応用した技法で、藍を主に天然染料で染色作品を制作しています。
板締め技法は一組の板で布を挟み文様を表す染色技法ですが、布地を幾重にも折り畳み、平らな板で挟んで染める「雪花絞り」などの素朴な「板締め絞り」と、文様を彫った版木で生地を挟んで染める「板締め」に分けられます。後者は、古代の染色技法「夾纈」、江戸時代中期以降に行われた「紅板締め」、「藍板締め」が確認されています。この技法は技術的にも不明な点が多く「幻の染色」とも呼ばれています。
工房では、天然染料と「板締め」の調査研究もおこなっています。
これまで「京紅板締め」(江戸時代中期〜大正末)の調査研究、島根県出雲地方の「出雲藍板締め」(江戸時代後期)の復元研究をおこないました。
中国浙江省温州で製藍と中国藍板締め(清朝〜一九七〇年代)の現地を訪ねたのを皮切りにインドのアーメダバードで発見されたインド夾纈の版木(キャリコ博物館蔵)の版木調査をキャリコ博物館と共同で実施し、バーゼル博物館(スイス)所蔵のインド夾纈版木の調査をしました。
上質なインド藍の生産地である中米エルサルバドルで実施した藍染ワークショップの折、製藍現場やスペイン統治時代の製藍遺跡を尋ねました。
これらの調査を踏まえ、正倉院紀要(年次報告)等の資料を参考に古代板締め「夾纈」の復元を試みています。復元対象として、保存状態が良好で模様や色彩の目視が可能で、文様1単位の意匠が確認できる夾纈裂を選択しています。
現在、正倉院蔵「紺夾纈絁几褥」(南倉一五〇−一四)に使われている「紺地花樹双鳥文夾纈平絹」の復元作業を行なっています。
その結果をホームページ等に掲載しますので、ご意見やアドバイスを頂ければ幸いです。
牡丹文夾纈 17世紀前後
八宝文夾纈 17世紀前後
チベットタンカ包布夾纈 17世紀以降
中国藍板締

日本では出雲地方で江戸後期に藍板締染が行われていましたが、中国でも1970年代まで行われていました。この裂は中国で再現されたものです。この布の用途は新婚のための夜具カバーです。そのため吉祥文様があらわされています。